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26 対決

Auteur: 鈴田在可
last update Date de publication: 2026-03-13 12:15:53
 窓を見れば通常よりもかなり太い鉄格子がねじり切られていた。

(やっぱり、あれはシドには意味がなかったのね)

 おそらく、シド以外の男をこの部屋に侵入させないためだったのだろう。

「愛している、ヴィクトリア」

 十一歳の時に宴会をすっぽかそうとして踏み込まれた時以外に、シドがこの部屋に入ったことはない。

 ここはいわば聖域だった。この部屋にいれば安全だったはずなのに、破られた。シドが境界を超えてきてしまった。もう、戻るつもりはないのかもしれない。

 シドの体から大量のお酒の匂いがする。ヴィクトリアは微笑みを貼りつけた。

「酔っているのね。帰る部屋を間違えているわ。送っていくから一緒に行きましょう」

 何とかこの部屋の外に出ようと、さり気なく廊下に通じる金属製の扉へ近づこうとしたが、歩き出す前に腕を掴まれた。

「酔ってないぞ」

 腕を引っ張られた勢いでシドの腕の中に閉じ込められる。あっという間の出来事だった。

「酔っている方がお前が受け入れやすいと思ったからそうしたまでのこと。俺が酒に呑まれると思うか?」

(シドもまた、私のように仮面を被っていたのね……)

 ヴィクトリアは貼りつけた笑み
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    「お前、やっぱり…… レイン――」「そんなことないわ!」 リュージュの口から「レイン」の名前が出た途端、ヴィクトリアは話を遮るようにすかさず口を開いた。「私が愛してるのはリュージュだけよ! リュージュ以外の人には、抱きしめられるのもキスされるのも無理だったもの!」「無理だった、なんて、経験してきたような口振りだな?」 リュージュがいぶかしげな表情で言うのを受けて、ヴィクトリアは動悸を感じた。(今日のリュージュは冴えてるわね!) 夢の中に現れたレインは怖い顔をしていて、なのに、ヴィクトリアを抱きしめてキスしようとしてきた。「ゆ、夢の中の話よ? 夢の中でレインが襲いかかってきて、抱きついてキスしようとしてきたけど、腕を振り払ってすぐに逃げたから、何もされてないわ」 そしてその後追いかけっこが始まったが、撒いてやった。夢の中の話だが。「お前がレインじゃなくて俺を一番に愛してくれているのはわかってるよ。 実はさっきお前に『愛してる』って言われるまでは、もしかしたら『番の呪い』が解けてないんじゃないかって、心配になってたけど…… なあ、一番最初に俺と体を繋げた時に、頭の中で『カチカチカチ』って音がしなかったか?」「そういえば…… そんな音がしていたわ」 ヴィクトリアの答えを聞いたリュージュはうなずいた。「俺にも鳴ったよ。その音は番を得た時に自分の頭の中だけで鳴るらしい。相手と番になったことを示す印みたいなもんだ。 でも、中には体を繋げても音がしないこともあるって聞いたことがあったから、ちょっと心配になってた」「そうなのね……」 母を思春期前に亡くして、里の交友関係も狭かったヴィクトリアは、そんな話は誰からも聞いたことがなかったし、本で読んだこともなかった。 ヴィクトリアはふと、『番になる音』が鳴る前に、ガラスが割れるような音を聞いていたことも思い出した。(もしか

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     脱衣所でリュージュに体や髪の毛を拭いてもらう。 振動が伝わりプルプル揺れる乳房をリュージュが食い入るように見ていたので、揉まれたり食べられたりするのだろうかと思ったが、タオル越しに触れる以外でリュージュが何かをしてくることはなかった。 リュージュは服が濡れてしまったので自分も風呂に入ると言い、浴室に消えていった。ヴィクトリアは脱衣所にリュージュがあらかじめ置いていた服に着替えた後、リビングに向かった。 リュージュが作ってくれた鍋料理を台所に持ち込んで温め直す。お腹はペコペコだったが、リュージュが来てから一緒に食べようと思った。 鍋の火を止め、ソファに座って休憩していると、それほど時間も置かずにリュージュが現れた。「なんだ、先に食べていてよかったのに」「一緒に食べたかったの。それに臨時集会のことも気になるし、食べながら話を聞こうかなって思って。リュージュの話って集会のことよね?」「えーっと…… まあ、それもある……」 リュージュの返事はどこか歯切れが悪かったが、ヴィクトリアが肉料理を皿に盛りつけようとすると、リュージュもそばに寄って来て、二人で仲よく食事の準備をした。 ****** リュージュによれば、やはりシドの処刑は予定通り執行されたそうだ。 そのことを聞いた瞬間にヴィクトリアは目を伏せてポロポロと涙を流した。 相向かいに座っていたリュージュは食事を止めて席を立つと、「大丈夫か」とヴィクトリアを抱きしめて、落ち着くまでそのままでいてくれた。 リュージュは涙こそ出さなかったが、ヴィクトリアに感化された様子で、少し目が赤くなっていた。 酷い父親だったが、リュージュにとっては実父であり、悼む気持ちはあるのだろう。「しょうがないよ。あいつは、それだけのことをしてきたんだから」 ヴィクトリアがひとしきり泣き、落ち着きを取り戻した頃に、リュージュが冷めてしまった料理を小鍋を使って温め直してくれた。食事を再

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     マグノリアとカナリアが浴室に行ってしまい、キッチンの片づけも終わった頃、どこかへ姿を消していたロータスがリビングにふらっと戻ってきた。 リビングとキッチンは続き部屋になっていてほとんど一つの部屋だ。ヴィクトリアは内心で二人きりになってしまったと焦っていた。 ロータスは何を思ったのかヴィクトリアのいるキッチンまで真っ直ぐにやって来た。 ヴィクトリアはロータスに場所を譲ろうと動くが、さささっと思いっきり避けるような動きになってしまう。「……」 ロータスは何だかやっぱり傷ついたような顔をしているが、そのことに関しては何も言わずに、棚の中からカップを取り出す。 なぜか、二つ。「ヴィー

  • 獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかけて逃げた後その中の一人と番になる~   16 油断大敵

     ナディアが札を破った瞬間、マグノリアは札からの魔力が途絶えたことにすぐ気づいた。 夕食の皿を洗っている最中だったが手を止めて、キッチンのカウンター上に置いていたナディアの写真に目をやる。 ナディアは長い黒髪のウィッグと眼鏡を装着している最中だった。慌てている様子は微塵もない。 向こうで何かが起こったわけではなくて、ナディアが自ら札を破ったのだろうと思った。 マグノリアはその理由に心当たりがあった。 先ほどナディアからの改善要求を受け、今度は出来るだけイケメンにしてみようと金髪碧眼の美青年にしてみたのだが、よくよく考えたら、その姿はナディアにとっていわく付きの相手の容姿に似ていた。

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    「ロイがロータスなら、あなたはもしかしてマグノリア?」「ええ、そうよ。私の本当の名前はマリアではなくてマグノリアよ。リュージュから聞いていたのね」 ヴィクトリアはうなずいた。 結論から言うと、ヴィクトリアはこの夫妻のことを知っていた。 実際に会ったのは本日が初めてだが、彼らについての話はリュージュから聞いていた。 リュージュは里にやってくる前まで年の離れた兄ロータスと一緒に各地を転々と放浪し、人に見つからないように山や森の中に隠れて暮らしていたという。 ある時、山に隠れ住んでいると、その地を治めていた領主の娘に見つかってしまった。 娘の名はマグノリア・ラペンツ。現在ヴィクトリア

  • 獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかけて逃げた後その中の一人と番になる~   12 『真眼』の魔法使い

    ヴィクトリアはマリアに案内されて二階のリビングまで来ていた。 ヴィクトリアは聞きたいことがたくさんあったので、移動の途中で彼女に話しかけようとしたが、マリアは口を開きかけたヴィクトリアの唇に人差し指を押し当てて黙らせてしまった。 「誰かに聞かれるとまずい話が色々あるから、周りに誰もいない所に行ってからにしましょう」 ヴィクトリアが話そうとするのをやめた後も、なぜかマリアは指でぷにぷにとヴィクトリアの唇の感触を確かめている。 何だろうと小首をかしげながら瞬きをしているヴィクトリアを見たマリアは、ふふふ、と妖しく笑ってから指を離した。 ヴィクトリアは促されてリビングにあったテー

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